あなたの中のエンジンがかからない?

クラニオ・バイオに「イグニッション」という考え方があります。


イグニッション(Ignition)は、バイオダイナミクスにおいて「生命の火を灯す」ような、極めて神聖でダイナミックな瞬間です。フランクリン・シルズ氏の著書に基づき、その核心をお伝えします。

シルズ氏は、イグニッションを「生命の息吹(Breath of Life)が、受肉した存在(肉体)の中に自らを統合し、活力を吹き込むプロセス」と定義しています。


3つの主要なイグニッション

シルズ氏の理論では、人間には主に3つのイグニッション・ポイントがあるとされています。

受精のイグニッション (Conception Ignition):

受精の瞬間に起こる、生命の根源的な火花。存在の「原型」が定まるプロセスです。

ハートのイグニッション (Heart Ignition):

胎生期(受胎後4週間頃)に心臓が鼓動を始める時に起こります。これが**「第2中立」**と深く関わり、システム全体に「関係性の場」を広げます。

第3のイグニッション(出生のイグニッション / Umbilical Ignition):

出生後、臍帯が切られ、自律的な呼吸が始まる時に起こります。これにより、個体としての自己調整能力が確立されます。


臨床におけるイグニッションの重要性

セッション中にイグニッションが起こる時、クライアントさんは以下のような現象を感知することがあります。

統合の瞬間: バラバラだった組織や流体のリズムが、一つの大きな「光の場」や「熱」として統合される感覚。

「中心」の確立: クライアントのミッドライン(正中線)が明晰になり、そこから生命力が四肢へと放射される感覚。

健全さ(Health)の顕現: どんなに深刻なトラウマを抱えていても、その奥底にある「決して傷つかない健全さ」が表面に現れてくる瞬間です。


シルズ氏が強調した「セラピストの在り方」

シルズ氏は本の中で、セラピストがイグニッションを「起こそう」としてはいけないと強く戒めています。

イグニッションは、適切な「中立(Neutral)」が保持され、システムが十分にリソース(資源)を感じられた時に、「自然に発生する(Emergent)」ものである。

セラピストにできるのは、静止(Stillness)の中でその火花が散るための「神聖な空間」をホールドし続けることだけだ、という教えです。

ロングタイドジャンキーの私は、セッション中にふっと静寂が深まり、その後にクライアントの全身がポッと温かくなるような、あの「命が吹き込まれる瞬間」を何度も目撃してきています。


「待つことの質」がイグニッションを呼び込む鍵です。


では、どんな人にイグニッションは必要か??


バイオダイナミクスの視点では、すべての人間はすでにイグニッションを経て生まれてきていますが、臨床的な意味で「イグニッションの再活性化」や「そのプロセスをサポートすること」が必要なのは、以下のような方々とされています。

1. 「断片化」を感じている人

トラウマや極度のストレスにより、心と体、あるいは体の各部位がバラバラに感じられる(ディソシエーション/解離)状態の人です。イグニッションは「全体を一つに統合する火花」なので、システムが再び一つのユニットとして機能するのを助けます。

2. 生後や胎生期のプロセスに困難があった人

出生時のトラウマ: 難産や帝王切開、臍帯が早く切られた場合など、「出生のイグニッション」がスムーズに完了しなかったケース。

初期の愛着形成: ハートのイグニッションが関わる「関係性の場」において、安心感が十分に得られなかった場合。

3. 深い疲弊(バーンアウト)や、生命力の低下を感じている人

「ガソリンはあるけれど、エンジンに火がつかない」ような状態の人です。ロングタイドの静寂の中で、システムの奥底にある「健全さ(Health)」に再び火を灯す必要があります。

4. 「自分の中心」が見失われている人

自分がどこにいるのか分からない、自分の人生を生きている感覚が薄いといった方にとって、ミッドライン(正中線)を確立させるイグニッションのプロセスは、自己の存在を確立する大きな助けになります。

シルズ先生はよく、「私たちは常に『健全さ』を抱えているが、それが表現されるのを妨げている慣性(Inertia)があるだけだ」といった趣旨のことを述べています。

「慣性」とは、心身のトラウマのキズ、などですね。

セッションを行うとき、クライアントが深い静止に入った後、パッとシステムが輝き出すような瞬間があります。それはまさにその人の内側でイグニッションが再起動した瞬間と言えるでしょう。

「特定の誰かに必要」というよりは、「生命力が本来の輝きを取り戻すための、すべての癒しのプロセスの核心である」と考えて、日々の施術に取り組んでいます。



そらとり神経調律専門サロン

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