見捨てられ不安と愛着障害

愛着障害とは文字通り、幼少期の愛着形成に問題を抱えている状態の事を指します。

愛着とは、幼少期に親など養育者と子どもの間に情緒的なきずなが育まれていく事です。それがなんらかの形で上手くいかず、信頼関係や親や養育者の愛情を感じられないまま大きくなってしまうと、対人関係や社会生活に問題を抱えやすくなると言われています。

精神科医である岡田尊司先生は、「愛着を土台に、その後の情緒的、認知的、行動的、社会的発達が進んでいくからであり、その土台の部分が不安定だと、発達にも影響が出ることになる。愛着障害が発達障害と見誤られてしまうのも、一つにはそこに原因がある。」(引用:「発達障害と呼ばないで」(幻冬舎新書))と言っています。

その他にも、愛着障害が他の障害や精神疾患高血圧過敏性大腸症候群のリスクに繋がる可能性も指摘されています。

例えば、心理学的な最初の愛着形成の段階は赤ちゃんの時です。子どもは産まれた時は一人で食べる事もトイレに行くこともできません。お腹が空いた時、オムツが汚れた時に赤ちゃんが泣いて訴えた時に親や養育者がミルクをくれた、オムツをきれいにしてくれたという自分の欲求を訴えた時に満たされるという繰り返しで心理的な信頼関係や愛情、きずな等が芽生えて愛着形成に至ります。これが最初の他者とのコミュニケーションになります。

人は、身近な親や養育者との愛着形成から、成長と共に周りの人との関わりを通して愛着を獲得していきます。この愛着関係が心の深いところに根付き、自立心や自尊心が育っていき、人間関係や社会性が発達していくと言われています。愛着形成がなんらかの理由でうまくいかずに大人になると、自立心や自尊心が低くなりやすく他者とのコミュニケーションが取りにくくなったり、社会生活や心身の健康に影響を及ぼす可能性があるのです。


愛着とはそういうことなんですけど、そこでうまくいかないと「見捨てられ不安」というのが起きるんです。

見捨てられ不安とは、自分の好きな人が私のことを捨て去るんじゃないかと思ってしまう心理的状態を指します。

ちょっとした一言、ちょっとしたケンカ、些細なことにも過剰に反応してしまいます。

「もういいよ」とプイッとしたり、腹が立ってトイレに籠るなど、そのちょっとしたすれ違いや摩擦、対立に対して過度な不安を覚えるんですよね。

もう自分は捨てられるんじゃないか。自分はもうこの人を失ってしまう。嫌われてしまったんじゃないか。もう永遠の別れなんじゃないか。この人を失ったら、自分はもう生きていけないんじゃないかみたいに思うわけです。これを見捨てられ不安と言います。

母親を失う赤ん坊のようなものとよく例えられますが、そういうことが大人になっても起きるということです。

重症な人もいれば軽い人もいます。生きるのに苦しくなって精神科を訪れる人も多いです。

見捨てられ不安がある人で診断されているのが多いのは「境界性パーソナリティ症」、「摂食障害」、「うつ病」、「双極性障害」、いろんな疾患で見られる心理的状態です。




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